第30章 家族の絆
和父『名前…?それは…そんな大役私には出来ません』
『お義父さんに頼みたいんです』
和父『でも子供は…大野家の長男でしょう。そちらの親御さんに付けてもらうのが…』
『言い出したのは…うちの父です』
和父『え…』
『結婚した時はあまり考えてませんでした。でもかずが妊娠してから…お義父さんの事…考える様になったんです。このままじゃいけないんじゃないかって。だからたまに相談したりしてました。そしたら…かずとお義父さんが歩み寄るきっかけになればいいんじゃないかって。だから…うちの両親も…お義父さんに名付け親になって欲しいと思ってるんです。だから…お願いします』
和父『………ひとつだけ…約束してくれますか?』
『はい』
和父『和也が認めてくれなければ…お断りします』
『分かりました。それならきっと大丈夫です』
和父『いや…許してもらえる自信はありません』
和「はぁ…。勝手に決めて…。俺はさとしに頼んだんだよ」
「分かってる。ごめん。でも先に言うと反対されそうで」
和父「和也すまない。やっぱり…」
和「で?何?」
和父「え…」
和「考えてきたんでしょ?どんな名前?変な名前だったら断るから」
そっぽを向いたままかずは呟いた。
和父「あ、ああ、うん。気に入って…もらえるといいが」
抱っこしていた子供をお義母さんに預け、ポケットから紙を取り出した。
その手は少し…震えていた。
和父「一応…寝ないで考えたんだが…」
渡された紙を…かずと一緒に見つめる。
そこには…『智也』と…書かれていた。
「………ともや…ですか?」
和父「他にも色々考えたんですけど…これが1番私にはしっくり来て…。2人から一字ずつ…貰ってこれに…」
和「さとしの…智と…」
「和也の也で…智也…」
和父「………和也…正直に言ってもらったら…」
和「………いいよ。これで…最高の名前じゃん…」
「かず…」
和「………ありがと。父さん…」
和父「和也…」
かずの瞳に…うっすらと涙が浮かぶ。
和父「ありがとう…!」
和母「智也か。とも君ね。ともくーん」
おいらの決断は間違ってなかった。
智也…。
ママとおじいちゃんがもっと仲良くなる様に…一緒に頑張ろうな…。