第4章 結婚までの道のりー前編ー
事務所の応接間に流れる長い長い沈黙。
潤も俺もソファーに座ったままうつ向いてる。
顔を上げる事が…怖かった。
俺達の両サイドには俺のマネージャーと潤マネ。
正面には社長とジュリーさんが座っていた。
「………」
潤「………」
ジュリー「………本当に間違いないのね?」
ようやくジュリーさんが口を開いた。
「はい。ここに来る前…検査してもらいました」
ジュリー「何ヵ月?」
「………3ヶ月目です」
ジュリー「じゃあ…春には産まれるのね」
「はい」
ジュリー「はぁ…」
大きく溜め息を付き、また押し黙ってしまった。
潤「………本当に…申し訳ありません」
潤が深々と頭を下げ、俺もそれに習った。
ジュリー「『すみません』で済む事じゃないのは分かってるでしょう?せっかく…やっとここまで来たのに。やっと軌道に乗り始めてこれから忙しくなるって時に…ふざけるんじゃないわよ!!」
部屋にジュリーさんの怒号が響いた。
ジュリー「結婚して子供産むですって?何考えてんのよ!春にはツアーがあるのよ?五大ドームよ!?あんた達の念願だったでしょ!翔は映画の撮影もあるし潤は映画の公開が2本控えてるのよ!結婚なんて…ましてや子供なんて産める筈ないでしょう!!」
「………」
潤「………」
返す言葉がない。
やっぱり…無理なのかな。
そう思った瞬間だった。
潤「お願いします!!」
「じ、潤…!」
立ち上がったと思った潤が、ソファーの横で土下座をした。
潤「解雇になっても文句言えないのは分かってます。でも…どうしても譲れないんです。翔…翔さんと結婚したいんです。愛してるんです!」
「潤…」
潤「フォロー出来る事は全力でやります。どんなペナルティーも受けますから…お願いします!!」
脳裏に浮かぶ昨日の潤の言葉。
『翔もお腹の子供も俺が全力で守るから』
………守ってもらってばかりじゃ駄目だ。
「お願いします…!出来る限り仕事続けます。だから…お願いします」
潤の隣に座り、俺も土下座をした。
ジュリー「………」
ジュリーさんが何か言いかけたのと同時だった。
社長「2人共立ちなさい」
社長が静かに口を開いた。