第73章 押された背中
ー和也sideー
智「ほら、来いよ」
先に湯船に浸かったさとしが手を伸ばす。
その手を掴むとそっと引かれ、俺はそのまま湯船へと浸かった。
「………」
智「………」
後ろからさとしに抱き締められながら浸かる体勢になる。
暫く黙ってるとさとしの手がゆっくりとお腹を包む様に触れた。
「………」
智「結構目立ってきたな」
「ん…」
智「悪かった。あんな怒鳴り方して」
「………俺も…ごめんなさい」
智「本当に…心配なんだ子供の事もだし…無理に仕事続けてお前に何かあったらって。伝わってないって思ったらカッとなっちまって」
「伝わってない訳じゃないよ。ただ…」
智「ただ…?」
「………傲りがあった。3回目だし…さとしが心配し過ぎるんだって。大した事ないって…」
智「………」
「でも…さとしに怒鳴られて…あんなに怒鳴るなんて思わなくて…びっくりしたけど…でも…さとしが怒るだけの事俺はしてるんだって思ったら…自分が情けなくて…きっと…バチが当たったんだね。発育不全なんて…」
智「そんな事ないぞ。でも…分かって欲しい。心配なんだ。だから…来年までは…出産と子育てに集中して欲しい」
「うん。俺も…さとしに言われたからじゃなくて…俺がそうしたいって思う。目を覚まさせてくれてありがとう」
智「うん」
「でももう…あんなに怒るさとしは見たくない。本当に…怖いよさと…」
智「本当に申し訳ない…」
さとしのおでこが背中に触れる。
顔は見えないけどかなり落ち込んだ顔をしてるだろうそれを想像すると少し笑ってしまった。