第11章 復帰
「じゃあ乾杯♪」
翔&和「乾杯~♪」
チンとグラスの音が鳴る。
そのまま俺達はビールを一気に飲み干した。
翔「ぷはぁ…」
「じゃあいただきます」
にの特製のその鍋を俺達はつつき始めた。
翔「美味しい!」
「うん。美味い」
和「んふふ。ありがとございまーす」
醤油仕立てのその鍋はあっさりしていていくらでも食べれる様な美味しい鍋だった。
翔「にののお母さん凄いね」
和「小さい頃よく食べたんですよ。今思えば…離婚してから生活苦しくなったんですよね。でも鍋は余り物の食材で簡単に出来るからよく作ってくれたんですよ。色々食べられるから私と姉ちゃんにはご馳走でしたね」
翔「そっかぁ」
「出汁がいいなぁ…うん」
和「和子も喜びますよ」
翔「今度作り方教えてくれる?」
和「勿論ですよ」
俺は楽しそうに話しながら食事をする翔とにのを見つめた。
にの…りーだーとの将来はどう考えてるんだろうか。
りーだーがプロポーズしたら…にのは受けるのか。
翔「こんな美味しいご飯作れるんだったらさ…もう2人結婚しちゃえばいいのに」
タイミングよく、翔がいい事を口走った。
和「………」
にのは何も答えずにビールを飲んだ。
………俺も…りーだーの役に立ちたいな。
そう思った俺は口を開いた。
「にの。にのはりーだーとその…結婚とか考えないの?」
和「………」
翔「にの」
和「私は…今のままでいいです」
翔「え…そうなの?」
予想外の答えに俺も翔も驚いた。
「りーだーは?りーだーはそう思ってないかもしれないよ」
和「さぁ…同じなんじゃないですか。結婚のけの字も出た事ありませんから」
翔「………でも…」
和「………小さかったんですけど…でもハッキリ覚えてます。離婚前は本当に毎日喧嘩でそれは酷かったんです。父と母の大声。物が壊れる音。始まると姉ちゃんと押し入れに隠れて終わるまで抱き合ってました。あの頃の母は…毎日泣いてました。『ごめんね』ってよく言ってました。そういうの見てるとね…結婚願望なんて全く沸かないんですよ」
翔「………」
「………」
にのの言葉に俺達は言い返せずに黙ってしまった。