第3章 ♠小さな温もりが…
幸いサトミーの怪我も大したことなく、入院するほどでもないってことで、家に連れて帰ることが出来た。
お気に入りのブランケットを丸めただけの、簡単なサトミー専用のベッドに、そっとサトミーを下ろすと、
『ミィー』
と、弱々しく鳴きながら俺をじっと見ていた。
そっと手を差し出すと、一瞬サトミーの身体がビクッとなって…いつもなら俺の指ペロペロ舐めてくるのに…
「…なんだよ、ごめんってば…俺が悪かったって…だからさ、もうそんな怯えんなよ…」
あの人に振り向いて貰えないからって、サトミーに八つ当たりするなんて、どうかしてた。
なんてね…今更ながらに後悔してるんだ。
だってその証拠に、耳の奥に、コンクリートに叩き付けられた時の、グシャともベチャともなんとも言えない、あの嫌な音がずっと張り付いて離れない。
だから…なのかな、差し出したその手は微妙に震えていたんだ。
動物は敏感だってよく耳にするけど、本当にそうなのかもしれない。
俺は溜息を一つ吐くと、こたつに足を伸ばした。
『ミーミーミィ』
ん?
もしかしてコイツ…
「くるか?」
『ミィ~』
ブランケットごとサトミーを抱き上げると、胡座をかいた足の上に乗せた。
俺の体温を確認するように、身体を丸くすると、サトミーはゆっくり目を閉じる。
そう、ここがサトミーの特等席。
そして、サトミーがくれる癒しの空間こそが、今の俺の一番大切な場所なんだ…
おしまい