第3章 ♠小さな温もりが…
手の中で小刻みに震えるソイツを、一刻も早く暖めてやりたくて、髪から服から滴り落ちる水滴も気にせず、リビングに入るとすぐにヒーターとこたつの電源を入れた。
濡れた小さな身体をタオルで拭いてやると、ソイツは『ミーミー』って鳴きながら、俺の手ペロペロ舐めてきた。
その擽ったいような感触に思わず笑みが溢れる。
「お前さ、腹減ってんのか?」
ソイツをブランケットの上に一旦置くと、冷蔵庫からミルクを取りだし、それを鍋に注いだ。
軽く温めたミルクを皿に移してソイツの前に差し出してやる。
一瞬警戒した様子を見せたけど、やっぱり空腹には勝てなかったらしく、ソイツはピチャピチャ音をたてながら、小さな舌先でミルクを飲んだんだ。
「俺と一緒に暮らすか?……名前…つけなきゃね」
俺はソイツに大好きな人の名前をつけた。
どんなに恋い焦がれても、決して振り向いてはくれないだろう…あの人の名前を…