第12章 ♣あの娘が・・・
「あのさ…」
先に口を開いたのは俺。
「さっき擦れ違ったよね…。
駅前の書店で…」
智子ちゃんが驚いて顔を上げた。
「男の子の格好してたけど、すぐ分かったよ、智子ちゃんだ…って」
もっと前から気付いてた、なんて言える訳ない…
「良かったらさ、名前教えて?」
勿論、本名ね、って付け足す。
「さ、さと…し…。大野…智…」
蚊の泣くような小さな声。
それでも俺は聞き逃さないよ、君の声を。
「そっか、智くんか…」
「あ、俺は櫻井翔、って知ってるか〜(^_^;)」
斜め隣に座る智子ちゃんが俯いたまま頷く。
「幻滅…しなかった…? 男の姿見て…」
俯いたまま話し出す智子ちゃん。
「しなかったよ? 俺は智子ちゃんもすっげーかわいいと思ったけど、智くん?はもっとかわいいと思ったよ?」
って、何言ってんの〜、俺ってば(^_^;)
智子ちゃんの顔が茹で蛸状態だ…