第12章 ♣あの娘が・・・
その後、制限時間ギリギリまで2人(ほぼほぼ和子ちゃんの独壇場だったけど…)のテンション上がりまくりのサービスを受け、俺達は店を後にした。
「どう、楽しかっただろ?」
「そこそこには…」
曖昧な返事を返した。
楽しくなかった、と言えば嘘になるから。
ポケットに手を突っ込むと、帰りがけに渡された智子ちゃんの名刺。
ピンクの小さな紙に、あの姿からは想像出来ないような、達筆な字で“智子”って書いてある。
“ギャップ萌え”狙いか?
それにしても
「可愛かったな…智子ちゃん…」
独り言のつもりが、しっかり長瀬くんに聞こえたらしく、
「あぁ、確かに可愛かった。でもな、櫻井。和子ちゃんの方が可愛いぞ?」
って…
それは個人的主観でしょ?
俺は智子ちゃんが可愛いと思ったの!
でも、
「和子ちゃんは美人さんですよね…」
なんとも当たり障りのない答え。
まあな…、と言ったきり、先の日言葉を濁す長瀬くん。
「何ですか?」
覗き込むようにして下から見上げる。