第2章 ♠鍋が…
翔side
電話を切ってから約10分。
インターホンのモニターに写った松潤に、
その首に巻いたストール、大物俳優かよっ!
って、思わず突っ込みたくなる。
「いやぁ、悪るかったね、急に呼び出したりして」
玄関ドアを開け、部屋に松潤を招き入れる。
「で、問題の部屋はどこよ?」
言いながら、スーっと俺の前を通り過ぎ、リビングを目指して歩を進めた。
そして、リビングのドアの前で立ち止まり、漸く俺を振り返った。
松潤がサングラスを外し、俺に合図を送る。
俺がコクンと頷いたのを確認し、ゆっくりとリビングのドアが開かれた。
「……………」
その奥に広がる想像を絶する光景に、流石の松潤も言葉もない…訳でもない。
「…翔さんよぉ、ワクワクするねぇ♪」
肩にかけたボストンバッグを床の空いたスペースにそーっと置くと、何やらガサゴソ…
出てきたのは真っ白な割烹着と、三角巾、マスクにゴム手袋…
コートを脱ぎ、これまたボストンバッグから出てきたハンガーにかけると、カバーまでしちゃって…
で、一通り装備を身に付けた松潤は、再び俺に視線を送り、
「あーゆーれでぃー」
と、一言…
アユレディおじさんきちゃったよ…
松潤…テンション上がってるのね…
実にテキパキと片付けを進めて行く松潤。
俺はというと…ソファーにちょこんと座ってる。
一応言ったんだよ? 俺も手伝うって…
でもさ、やんわり断られた…
「俺に任せなさい」って…