第12章 tie me up… tie you down…
櫻井side
O:「んっ……しょうちゃん?
きもち…よかった…?」
顔を赤らめ、はにかむような表情で
聞いてくる智くん。
「のんだの……?」
聞く俺の顔はさぞ、
間の抜けた顔だったと思う。
こくりと頷く智くん。
「なんで??」
焦って、怒鳴るように言う俺に
ビクッとする智くん。
O:「だって翔ちゃんのだから……。
怒ってる?」
「いや、そうじゃないけど……」
照れとか申し訳なさとか
色んな感情が入り乱れて、髪を掻きむしる。
膝立ちになった智くんがそんな俺の頭を
胸に引き寄せ包み込む。
俺の手に智くんの手が重なる。
伝わる体温。
智くんの指先が冷たくて…少し震えてる。
O:「……んね」
智くんが絞り出すような微かな声で言う…。
「え?」
顔をあげると
目に涙を溜めた智くんの顔があった。
O:「ごめん…ね」
さっきより少し大きい声…
でも…涙が混じった声。
俺の頭を包む腕に籠る力が少し強くなる。
智くんが俺の髪の毛に顔を伏せる。
激しく揺れ動く
智くんの感情に追い付けない。
訳もわからないまま
智くんのしゃくりあげる声を聞く。
俺は空いてる片手を智くんの頭に回し
その柔らかい髪を撫でた。
智くんの感情が揺れる時は
大体、無理矢理
言葉を呑み込もうとするときだから。
ここで下手に声をかけると
もう絶対に吐き出さないのは
経験上、わかってるから…。
何も言わず、髪を撫でながら
落ちついた智くんが発する声を待つ…。