第32章 ルビー
Satoshi side
智「お待たせ」
ビールとかつまみとか…
今晩かずと食べるものを買って戻ると
運転席でかすがハンドルに身を預けていた
ゆっくりと起き上がって
車を動かす横顔に
智「疲れてる?ごめんね…俺運転できなくて…」
そう謝ると
和「別に…大丈夫…」
また小さく簡潔な返事が返ってきた
車が俺のマンションの駐車場に停まって
周りを少し気にしながら
素早く家の玄関に入る
智「おかえり」
そう言って伸ばした腕は空気だけを抱き締めていて
和「…ただいま」
かずはさっさと家の中に入っていく
買ってきたものを片付けて
ソファでゲームしてるかずの隣に座った
智「俺…なんかした?」
和「…別に?」
智「じゃあなんで怒ってんの…?」
短い返事しか返してこないかずに触れようと
柔らかい髪の毛に手を伸ばしても
さり気なく交わされるから
視線だけを向けてきたかずの躰を
半ば無理矢理腕の中に閉じ込める
和「ちょっと…ゲームしてんだけど」
身を捩って抜け出そうとするのを
ぎゅっと抱き締めると
諦めたのか抵抗がなくなった
智「かず…どうした…?」
首筋にかかる髪の毛を指先で弄りながら
問いかけると
またかずからはため息が漏れた