第14章 クリスマスローズ
Sho side
キッチンの中から二人の会話を聞きつつ
夕飯になりそうなものを探した
…まぁ,あるわけもなく
出前でもとろうか…
と思っていると
「もう泣くなって……ちょ,櫻井助けてー」
長瀬君の明るい声が聞こえてきた
顔を出すとソファに座って
長瀬君が困った笑顔でこっちを見ていた
隣で俯いている潤の
震える肩に手をのせて
翔「潤,もう大丈夫だって…頑張るのはこれからだろ?」
Jrの頃よくやっていたみたいに
頭をわしゃわしゃっと撫でてやった
長瀬君の俺達を見る目は優しくて
俺まで安心する
「俺さ,実はあのドラマに特別出演させてもらうことになったんだよね」
俺達を見ながら長瀬君は楽しそうに話してくれた
だから,宜しくな!…と長瀬君も潤の頭をガシガシ撫でた
一緒に夕飯を誘ったけど
今日は遠慮する,と長瀬君は断った
今度,飲む約束だけして
「明日,現場でな~」
最後にもう一度潤の頭を撫でて
ついでに俺の頭までポンっと叩いて
なんとも気持ちよく
あっさり帰って行った
翔「俺達,先輩に恵まれてるよな」
コクンと頷く顔は
涙で濡れているけど
ほんのり笑顔だった
翔「潤,目冷やしとかないと明日腫れるぞ?」
ソファに寝かせて
冷たいタオルを瞼に押し当てた
潤「翔くん…」
タオルで瞳を隠しながら
手を伸ばしてくる
翔「頑張ったな…」
その手をきゅっと握り,顔を寄せ
薄く開いた潤の唇をそっと塞いだ