第1章 ベコニア
Sho side
頭をポンポンと撫でられて
嬉しそうに智くんを見上げる潤
いつもなら俺の役目なのに…
どうしても近づけない…
モヤモヤとした感情が胸の奥から湧き上がってくる
でもまた余計なことを言って
拒絶されるのも嫌だ
近くにいて変な事を口走るのも困る
だから距離を置くしかない…
撮影が終わると
すぐに着替えて楽屋を出た
潤はまた智くんと二人で
楽しそうに喋ってるのが見えた
智くんは俺より年上だし…
優しいから…
きっと潤も心許せるんだ
卑屈な考えに縛られていく
エレベーターの前まで来たとき
遠くの後ろから心を揺らす声が聞こえた
潤「翔くん!」
振り返らなくてもわかる愛しい声
走り寄ってきて息を切らせて急いで喋る
慌てなくていいのに…
潤「この間も…今日も…
迷惑かけてごめんなさい!
いつもフォローしてくれて
ありがとう!!」
真っ直ぐに俺を見つめる
濁りの無い瞳から目が離せなかった
潤「…まだ怒ってる?」
ただ唇を噛んでいる俺を
頼りない表情で覗き込んでくる
抱きしめたい…
翔「怒ってないよ…」
微笑みかけると
今度は子供みたいに無邪気に笑う
潤「…良かったー…」
俺が乗るエレベーターが開く
さっき智くんが撫でた頭を
上書きするようにポンポンと撫でて
エレベーターに乗った
好きだよ…
翔「お疲れ,またな」
エレベーターが閉まるまで
潤は笑顔で手を振っていた
四角い個室の中で
壁に凭れてしゃがみ込む
ずっと…俺の傍に置いておきたい…
……可笑しいくらい君が好き…
* To be continued ...