第8章 マリーゴールド
Sho side
急に身を捩って逃れようとしていた
潤の抵抗がなくなった
躰を堅く強張らせたまま
枕にしがみついて
シーツに顔を埋めていた
翔「…潤…?」
覗き込むと
浅い息継ぎでほとんど空気を取り込めない呼吸
ぎゅっと閉じられた瞳からは絶え間なく雫が流れ
血が出そうなくらい唇を噛んで耐えている
俺はこの時初めて
潤の顔をちゃんと見た
自分の熱が,血液が,さっと引いていって
急に頭が冷静になった
止まっていた思考が
一気に回り始める
無理矢理ねじ込んだ指を
傷つけないようにゆっくりと引き抜いた
その拍子に潤の躰からふっと力が抜け
ベッドの上に崩れ落ちた
翔「っ…ごめん…」
謝ったって許されないけど
言葉にしたら涙が溢れた
俺が泣いてどうする…
そう言いきかせて
潤の躰を丁寧に寝かせ直して
布団をかけた
まだ泣いてるけど,呼吸は戻って
苦しそうな表情は無くなったのを確認した
浴室でお湯が溜まるようにセットして
温かい濡れタオルを作って寝室に戻る
翔「潤…これで躰拭きな…」
俺に触られたくないかと思って
差し出すけど受けとらない
翔「…ごめん…触るよ?」
布団をめくると
俺の触った痕跡が消えるように
潤の躰を丁寧に拭いた
でも俺が無茶苦茶につけた赤い痣は
綺麗な躰に点々と浮かんでいて
拭っても消えるわけがなかった
それは謝っても消えない…
俺が傷つけた証拠の様で…
苦しかった