第58章 ストック
Sho side
斗『わかった…健くんの事は言わないでおくね…』
翔「ごめん…」
斗『翔くんが謝らないでよ…大丈夫…うちに来るみたいだから,帰りもちゃんと送るから…』
翔「ありがと…宜しくね…」
電話を切って帽子を深くかぶってから車を降りた
俺はまだ潤が寝ているうちに事務所に来た
泣いたとわかる顔を
潤に見せるのは嫌だったから…
「お疲れ様…櫻井くん…大丈夫…?」
事務所の駐車場の入り口で
マネージャーが待っていて
俺の顔を覗き込んだ
翔「ん…もう大丈夫…みんなが居てくれるから…」
「そうか…」
翔「それより…事故の件…教えて…」
「うん…用意してあるから…」
マネージャーの後に続いて事務所の中に入った
翔「これ…こいつが相手なの??」
マネージャーの資料には
顔写真付きの相手の名前があって
“萩原介一”
その顔も…
名前も…
見覚えのある…
思い出したくもない人間だった
「知ってるの…?…この人が抱きかかえて,病院に運び込んだって…」
…こいつが…
翔「っ…こいつ今どこにいんの⁉」
「逮捕されて…警察だよ…事件を公にしないように根回ししてあるからまだ留置場にいる…」
翔「なんのために潤に近づいたんだよっ」
「え…偶然じゃないの…?」
マネージャーは落ち着いて話せ…と
俺をソファに座らせた
翔「…こいつ…昔…もう10年くらい前…潤に手を出したやつだよ…」
「手を出したって…」
翔「セクハラ…いや…もうあれは暴行だった…俺がZEROを始めた頃のお偉いさんだよ…」
「…まじか…」
あのことは事務所の力で処理してもらったけど…当時の事務所スタッフの数名しか知らない
当然マネージャーも違う人間だったし…
「専務とかは…知ってるのか…」
翔「…知ってると思う…」
でも…あの頃は俺が…
俺に力が無さ過ぎて…
事務所がどう動いて救ってくれたのか…なんて何もわからなかった
翔「専務に会える…?」
「…連絡してみる…」
潤が…人に触れられるのを嫌がる理由…
こんな可能性があるとは思わなかった…
翔「くそっ…」
俺は…また守れなかったのか…?