第46章 ヒヤシンス
Jun side
半月くらい前までは
翔くんの元に車で向かうなんて当たり前のことだったのに
今はそこに向かうためにハンドルを握った手が
小刻みに震えている
心臓も落ち着かなくて…
言われたマンションに着く直前に
深く息を何度も吐き出してみた
マンションの外
死角になった位置に立っている翔くんを見つけて
そこに車を停めると
ゆっくりと助手席のドアが開かれた
翔「……潤…」
小さく呟かれる俺の名前
久しぶりに大好きなその声で“潤”と呼ばれて
涙が溢れてきそうになった
ここ最近収録でしか呼ばれることはなくて
収録では呼び方も“松潤”とか“松本くん”とかだから…
パチッと大きな瞬きをして零れそうな涙を堪えて
潤「…乗って?」
とりあえず外であるココから移動しなきゃ…と思って
翔くんに声をかけると
躊躇われていた一歩が踏み込まれた
潤「ホテルに…いるんでしょ?どこのホテルなの…?そこに向かっていい…?」
俺はずっと一緒にいたいし…
俺の幸せはそこにしかない…
でも話がどうなるかわからない今
翔くんの家に向かって
そこを出ることは多分俺にはできない
俺の家から一人で出ていく翔くんを見ることもしたくない…
だから…
いいと言ってくれるならホテルで話をしたい
そう思って車を適当に走らせながら言うと
翔「いいよ…そこで話…しよう…」
ホテルの名前を教えてくれて
翔くんも何度も使っていて使い慣れている
カーナビにそこの住所が打ち込まれた
潤「ありがとう…」
車内の空気に似合わない声が
ホテルまでの道を案内するのを聞きながら
車を運転した
斗真の家を出たときからずっと
何から話せばいい…?って考えていたことは
上手く纏まることのないまま
車はホテルの駐車場に停まった