• テキストサイズ

FIVE COLOR STORM

第3章 ドルフィン*Dolphin*


<翔>

病院のベッドに寝てるのも退屈で
潤は院内をうろうろしていた

昨日友達が見舞いに来てくれたけど

一日の大半は一人で時間を潰さなきゃいけないから…

最近のお気に入りは病院の屋上

案外人は少ないし
海が近いから風が気持ちいいし
景色も悪くない

紙カップのコーヒーを買って
外で漫画を読んだり
クロスワードパズルをやったりして
暇をつぶしていた

…でもこの日は…

急に雲が空を包んで
ポツポツと雨粒が落ちてきた

潤「やべ…」

完全にくつろいでいた潤は
慌てて松葉杖をつきながら雑誌を抱え
口に紙カップを加えて
室内に避難した

やっとの想いで室内に入った瞬間

潤「ぉわっ…」

松葉杖がタイルで滑ってバランスを崩した

片足で自分を支えきれず
びっくりした拍子に口から紙カップは離れ

松葉杖は音を立てて散らばり
躰と雑誌は床に投げ出された

潤「いっ…ってーーー…っ」

ギブスを嵌めた足を打ち付けて
激痛が足から頭まで突き抜けた

思わず涙目になって声にならない声を上げながら蹲った

その震える背中に添えられた温かい手

翔「大丈夫か??今,誰か呼んでくるからね?」

潤が顔を上げることもできずにいると
すぐに近くに居た医者と看護師が来て
車椅子に乗せられた

翔「これ…この人が持っていたモノです…あー…コーヒーは無理だね…これは僕が片づけておきますから」

顔を見ることはできなかった
でも…低い優しい声だけが潤の耳に残っていた


その日の夕方

検査から帰って来た潤の病室に
一杯のコーヒーが置かれていた

“もう零すなよっ”
紙カップに優しい文字が書いてある

潤「あつっ…」

コーヒーはまだ熱く,湯気がたっていた

潤「これ…誰が持ってきてくれたの…??」

看護師に聞いてみると

「いつもの掃除のおじさんに『忘れ物だから渡してくれ』って言われたんですよ」

潤「いつもの掃除のおじさん…?」

それからは

潤の暇つぶしが
掃除のおじさん探しに変わった

/ 97ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp