第3章 ドルフィン*Dolphin*
<斗真>
斗「松本さん,おはようございまーす」
一昨日,バイクでコケて足の骨折で病院に運ばれてきた潤
入院しているベッドのカーテンを看護師の斗真がゆっくり開けると
そこにはまだ夢の中の潤がいた
朝の弱い潤には
検温の時間に起きてるなんて難しいことで…
斗「松本さん…朝ですよ…」
ふふっと柔らかい苦笑を零した斗真は
トントン…と潤の肩を叩いて起床を促しながら
入院着の胸元の合わせから
体温計を差し込もうとした
潤「んっ…」
寝ていた自身の体温よりも
ひんやりとしていた斗真の手が躰に触れたことで
ピクっと小さく真っ白いベッドの上で躰を揺らして瞼をゆっくり開けた
潤「ん…なに…?」
まだ寝ぼけ眼でパチパチと瞬きをしながら
ふわっとした口調で問う潤を
斗真は内心可愛いな…なんて思いながら
斗「朝ですよ…起きてください?あ…検温してるので腕動かさないでくださいね」
潤の躰にかかっていた布団を胸下くらいまで下げた
斗「足の痛みはどうですか?」
斗真にそう言われて
自分の怪我を思い出して足に意識を遣るけど
潤「ん…昨日より平気…」
ギプスでぐるぐる巻きだから動きはしないものの
感じる痛みは随分和らいでいた
それを伝えると斗真の顔も和らいだ
その時脇に挟んだ体温計が軽快な音を立てる
斗「あ…失礼しますね…」
するっと斗真の手がまた入り込んできて
潤の脇から体温計を抜き取っていった