第4章 navy blue scene1
目が覚めると、雅紀と目があった。
ドロドロに溶け合うように、眠った俺らは、まだ裸のままだった。
俺は雅紀の方を向いて寝ており、雅紀はそんな俺を眺めるように横になっていた。
その瞳には、もう怯えとか迷いとか苦しみはなく。
いつもの穏やかで温かい光があった。
俺はそれを見て安心した。
一晩だけでも、忘れさせることができた。
自然と微笑みが出る。
雅紀もそれを見て、微笑む。
照れくさそうに、俺の頬を撫でる。
そして、くちびるの動きだけで、俺にこう言った。
すき
突然、驚くほど涙が出てきた。
どうすることもできず、途方に暮れた。
雅紀は最初はびっくりしていたが、すぐに微笑んで俺の涙を拭った。
「もう、泣き虫なんだから…」
そういうと、俺の頭を引き寄せ抱きしめてくれた。
俺は、なんだか泣いていることが気持ちよくなってきて、そのままワンワン泣いた。
いつの間にか、雅紀も泣いていた。
大の大人、しかも男が二人、ワンワンワンワン泣いた。
その後、また疲れて眠った。
今度は雅紀の手を握って。
指と指を絡ませ、お互い離れないように。
ぎゅっと握って眠りについた。
俺達の行き着く先は、どこかわからないけど。
でも今はこうやっていられるならいい。
雅紀が心おだやかにいられるならいい。
あの笑顔を見ることができるならいい。
俺は雅紀を陰から守り続けよう。
朝が来て、仕事へ行く。
「もーっ、潤ほんとに起きねぇんだもん!」
「仕方ねえだろ。誰かが寝かしてくれないから」
「ばっ…!俺だってなあ、痛てーんだぞ!」
「どこが?」
「ばっ…!ケツだよ!ケツ!いきなり犯しやがって」
「犯してくださいって言われたんだもん」
「そこまで言ってねーだろ!」
「いいや、あれはそう聞こえた」
「ち、ちがうもん!」
顔を真っ赤にしながら雅紀が怒る。
そんな雅紀がかわいくて、玄関のドアに追い詰めて、雅紀の横に手をつきキスをした。
「……んっ…もう、ごまかすんだから…」
「愛してるよ。雅紀」
「も、もういくよ!」
そういうと、雅紀は玄関のドアを開けた。
「いってきまーす!」
雅紀が言った。
俺はそれをきいて、なんだかとても安心して、一歩踏み出した。
雅紀との新しい一日が始まる。
【END】