第19章 シーモスscene1
雅紀が顔を覗きこんできた。
「ちゃんと言えたね。好きって」
「うん。あいつのこと少しでも思ってる奴がいるってわかってもらえたら、それでいいよ」
あの寂しそうな背中が俺たちには忘れられなくて。
俺たちにはこんなことしかできないけど。
とても感謝してるから。
カズヤのことは、俺たちには特別だから。
「よしっ、もうそろそろかずがくるよ」
「準備するかぁ…」
これからいよいよ俺たちは本番を迎える。
今まで練習してきたこと、シュミレーションしてきたこと、もうすんなりできる自信がついた。
それは全部カズヤのお陰で。
教えてくれたことを余すこと無く活かすつもりだ。
俺たちの愛するニノのために。
玄関のチャイムが鳴る。
「はーい!」
雅紀が迎えに行く。
リビングにニノが入ってくる。
「ちーっす。翔さん」
その笑顔は輝いていて。
愛おしくて。
眩しくて。
早くこの手に抱きたい。
我慢できなくて、ちょっと抱きしめた。
後ろから雅紀にどつかれた。
そう、本番はこれから。
焦る必要は、ない。
【END】