第10章 ラズベリーscene1
大事にしたい。
でも、俺は止まれなくて。
翔ちゃんのついたその手を、翔ちゃんの後ろへ回す。
そこへ触れるのは躊躇したけど、止まらなかった。
ぬるり、とそこに指を這わす。
翔ちゃんの身体が、びくっと強ばる。
「ごめん…とまらなくなった…」
俺はそれだけ言うと、指を翔ちゃんの中へ入れた。
「あっ…あぁ…」
翔ちゃんが仰け反る。
俺の肩を掴むと、爪を立てた。
ギリッと音がするくらい。
そこの皮膚が破れる感覚がした。
でもいい。
抉ればいい。
それで少しでも苦痛が忘れられるなら。
「あっ…智くん…あぁ…」
じりじりと指を奥に進める。
指が全部入ると、ゆっくりと動かす。
「う、動かさないで…あぁ…」
肩に食い込んでいる爪が、更に俺を抉る。
「だめだよ。解さないと。翔ちゃんがもっと苦しくなるから」
「やっ…苦しいよ…智くん…」
「我慢して…お願い…」
肩の痛みに耐えながら、それでも俺はやめられない。
少しでも翔ちゃんに楽になってほしかったから。
指が楽に動かせるようになったら、もう一本。
指を増やして、翔ちゃんをゆっくりとほぐす。
「あぁっ…も、苦しいよ…」
また涙が目から落ちた。
俺はまたそれを舐めた。