第9章 June bud scene1
朝、目が覚めたら手首が動かなかった。
よくみると、和也と俺の手が赤い紐で結んであった。
そうだよな。
心中なんて使い方より、よっぽどこんな使い方のほうが幸せだ。
満足しきったような笑みを浮かべた和也の寝顔を眺める。
朝の光に溶けるような、とても神聖なものに見えた。
守るとか、そういうんじゃなくて。
ただ一緒にいればいい。
一緒にいれば、和也が淋しくて泣いたって、すぐに抱きしめてやれるんだから。
そのまま俺はずっと和也が起きるまで、寝顔を見つめた。
「…あれ…」
「おはよ。和也」
「おはよ、まーくん…」
ねぼけまなこで自分の縛った手首を見ている。
「あっ、忘れてた」
「え?何を?」
「まーくん、逃げられないよ?」
「え?」
そういうと、和也はローションを取り出した。
「い、いや、待て!和也!」
「もう待たないから」
「朝はやめよっ?ねっ?」
「いーや。やるから」
「だめだってぇぇぇぇぇぇ」
この朝、俺はバージンを失った。
【END】