第9章 June bud scene1
「こいよ…和也」
俺が素直になると、和也は嬉しそうに笑った。
俺を縛っていた紐を解くと、ローションを手にとって俺の後ろに塗りつける。
初めての感覚に身体に力が入る。
「優しくするからね?雅紀」
「あたりめーだろ」
言ってはみるものの、言葉に力がない。
女にされんのかー…
「指、挿れるよ?」
和也の指が一本入ってきた。
「…っ…!」
するりと入ってきた指は意外にも違和感がなくて。
和也に挿れるときはめっちゃ抵抗を感じるのに。
「あれ?雅紀って経験あるの?」
「ねえし!」
「でも…なんかスムーズだよ?」
「しらねえし!」
「あ、上手なんだね。雅紀」
あっさりとそういうが、何がうまいんだかさっぱりわからない。
「やっぱり雅紀って、セックスが上手なんだね」
「やっぱりってなんだよ」
「だって俺がセックスしてきたなかで、一番うまいよ?」
「なんだそれ」
ふてくされて横を見る。
「和也、俺のことセックスうまいからすきになったのかよ」
「最初はね」
「え!?」
「でも、今はちがうよ。あんたがいないと生きていけないもん」
「なんだよそれ…」
「あんたがいないと、まっくらなの。あんたが傍に居ないと、俺、なんにも見えないの」
「和也…」
「だから、俺より先に死んじゃだめだからね」