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【ハイキュー!!】陽だまりの猫

第2章 4月


―黒尾鉄朗と朝練―




朝。黒尾鈴はいつも通りに目覚めた。
太陽が登るのが早くなったと、仄明るい部屋を見てふと思う。

…春か。そうか、もう4月だもんな。

私がこの家に住むことになったのも、そういえば2年前の4月のことだった。

ドアノブを静かに捻り、私に与えられた小さな部屋を出る。
廊下はまだ暗く、フローリングは冷たい。
物音を立てないようにそーっと階段を下り、お風呂場へ向かう。シャワーを浴びて身支度を整える。
何でもない朝のルーチンワークだが、鏡に映る新しい制服にはまだ慣れない。

(なんか似合ってない気がする…)


着替えてキッチンへ向うと、おばさんが起きていた。

「おはよう鈴ちゃん、今日も早いね」

「…おはよう…ございます」

絞り出すような小さな挨拶におばさんは「結構、結構」と満足して玄関に新聞を取りに行った。


それから2人でお弁当を作る間、新しい学校の事、新しいクラスの事をいろいろ聞かれた。

「友だちはできた?」

私は首を横に振る。
だってそんなすぐに作れる物じゃないし…

「先生はどんな人?」

(先生…?)

少し考え「厳しそう…かも」と私は答えた。

「へー、そうなんだ。怒られないようにしっかり授業を聞くのよ」

そう言っておばさんは笑う。
反対に私は不安になる。

(勉強、難しくなるだろうし…昼間は眠いし…)



「鈴っ!もーそんな顔しなくても大丈夫よ!」

頭をわしゃわしゃされて我に返る。
そういう所が鉄朗とそっくりで、親子だなって感じる。

「ねぇねぇ、クラスにカッコイイ子とかいないの?」

おばさんが楽しそうに聞いてくる。
ニコニコというよりニヤニヤという擬態語が近い。


私は質問に答えようとまた考える。
あんまりクラスの人と話せなかったし、顔を全然思い出せない。

けど…

「すごい…背が高い人がいた。びっくり」

名前がカタカナで、クラス名簿の中でもすごく目立っていた。確か…リエーフ、だっけ?

「あー、あの銀髪の子でしょ?入学式の時、保護者席からもバッチリ見えたよ」

そんな話をしてる間に点けっぱなしのテレビが天気予報を始めた。


「あら、もうこんな時間?鈴ちゃん、悪いけど鉄朗起こしてきて!」


私は頷く。手を洗い、キッチンを出る。

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