第1章 プロローグ
それから少し背が伸びて、俺も中学生になった。
そういえばこの頃の俺はまだ黒髪だったんだよな…。
相変わらずクロ以外のトモダチはできなかったけど、部活に入って練習、試合、たまに勉強と毎日が目まぐるしく過ぎた。
楽しいとはそんなに思わなかったけど、充実してたと思う。
中学に入って2回目の桜が咲く頃、鈴の事を思い出した。
隣の小学校だから中学からは同じはずだった。
そんなに熱心に探していたわけじゃないけど。
GWも終わった5月の半ば、俺はようやく鈴を見かけた。
部室棟の廊下ですれ違った、幼馴染みの面影を残す女の子。通り過ぎてから気がついて、俺はすぐに振り返った。それは確かに鈴だった。
…鈴だったが、鈴じゃなかった。
変わってしまっていたのだ。鈴は…。
ぱっと見ただけではわからない程に。
俺たちの後をずっとついて回ったあのニコニコの笑顔は無くなって…。
無表情のまま、誰とも目を合わせないようにジッと下を向いて廊下の隅を歩いていた。
(見つけたはいいけどさ…)
2年も会ってなかったし、雰囲気変わってるし。
なんて話しかけたらいいのか俺は全然わかんなかった。
鈴は俯いていたので俺に気づかないまま。振り返った俺も結局、声を掛けることは出来なかった。
それどころかあの事件が起こるまで、中学生の俺と鈴は一言も会話を交わす事は無かった…。今考えると信じられないし、思い出すのも嫌になる。
俺は……ホントに最低だよね。