第1章 プロローグ
―孤爪研磨と昔の話―
俺には幼馴染みが2人いた。
一人は近所に住む1つ年上の黒尾 鉄朗。
同級生から「クロ」と呼ばれていて、俺もそれに習ってクロと呼んでいた。
クロは小学生の時から今と変わらず強引で、今よりもっと無鉄砲だった。
学校が終わると家にランドセルを置くなりすぐ、バレーしようぜ!と俺ん家の、俺の部屋まで誘いに来た。ホント図々しい。
そのせいでと言うか、そのおかげと言うか…なんだかんだ俺は今もバレーを続けている。
もう1人は坂井 鈴。
クロのいとこで俺の1つ年下の女の子。
俺たちはそのまま名前で鈴と呼んでいた。
小学校の学区は違ったけど、音駒に住んでいたからよくクロの家に来ていて3人で遊んだ。
鈴は俺と同じでしゃべるのはあまり得意じゃなかった。
なんの遊びがしたいとか、どこへ行きたいとか…。そういうの鈴の口から聞いたことはないし、そもそも二人で会話した記憶はほとんど無い。
それでもクロと俺のやり取りを見て、ずっとニコニコ笑ってた。
そういえば、鈴とクロはその時から普通に会話してたかも。…なんかムカツク。