第2章 4月
―黒尾鉄朗と断罪―
「灰羽リエーフ…あいつマジてバレー部入んのかよ」
帰り道、自転車を漕ぎながら鉄朗が嘆いていた。そんなにハードな練習内容でも無かったのに、あからさまにげんなりしている。
「嬉しく、ないの?…リエーフ背も、高いし…」
昨日の宣言通り、彼は今日もバレー部の見学に来ていた。ちなみに本人たっての希望で、呼び方は名前の呼び捨てに変えさせられた。
「…あー、腹立つ」
一応鉄朗には担いで運ばれた経緯も説明したし、なんでそんなに長身で運動神経の良い新入部員を嫌うのか私には分からない。
「ただいまー、うぉー腹減ったー」
(…いい匂い!)
玄関を開けると煮物のいい香りがした。
今日は肉じゃがかもしれない。
キッチンにはおばさんが立っていて、鉄朗のつまみ食いを叱る。
後から入ってきた私を見ると「おかえり」と柔らかい笑顔で迎えてくれた。
「鈴ちゃん、ちょっと鉄朗に話があるんだけど、制服ゆっくーり着替えてきてくれる?」
私は深く頷く。
「鉄朗は今後の事について話があるから、そこに座りなさい」
ぶつくさ言いながら渋々ダイニングテーブルに着く鉄朗を横目に、私は部屋を出た。