跡部様のクラスに魔王様(Not比喩)が転校してきました。
第6章 鋭い視線が付け狙う
――そして、その頃。
氷帝学園中等部男子テニス部の部室からは、まだ灯りが零れておりました。
「ふ、我ながらいい写真が撮れたものだ」
レギュラーの数だけ用意されたパソコンに向かってキーボードを叩きつつ唇を吊り上げた少年は、満足げに頷きました。
既にデータをパソコンへと送り込んだデジタルカメラには、報道委員会、とシールが貼られております。それを使える以上彼ももちろん報道部員なのでございますが、外国の怪しげなWebページから動画や写真をダウンロードした際に見事報道委員会のパソコンをウィルスに感染させてから、固くそちらのパソコンの使用を禁じられているという、曰くつきの人物でございました。
「しかし、この目でまさか本物の異種族が、しかも魔王なんてものが見られるとは……ふ、早く全てを曝け出させてやりたいところだ」
嗚呼、けれどだからこそ、彼の企みに気付く者はございません。
印刷機が音を立て、大量にプリントアウトされた紙が吐き出されていきます。その中には写真もございましたが、魔王の写らぬものは1枚もなく――それをやたらと丁寧な手つきでまとめ、周到に用意されたのはビデオカメラにマイク、ICレコーダー、大量の写真が撮れるようにバックアップ済みのデータをきっちりと消したデジタルカメラ、それらをセッティングするための三脚やスタンド。
彼の企みとは、一体――?
「明日が、楽しみだ」
長い前髪の奥から覗く瞳が、パソコンのディスプレイライトに照らされてぬめりと光り輝きました――。