【おそ松さん】マフィア松でスパダリ長兄松に溺愛されるだけ
第4章 イタリア行き
マツノさんが電話をかける音がする。
そして、数コール後。
「荷物を運んだ奴は、生かして捕まえろ。そいつは、グルな可能性が高い」
私達は、後部席で息を潜めながら聞き耳を立てた。
横にいるおそ松さんとカラ松さんの目が鋭くなっている。
嵌められた事に怒ってるのかな……?
「――それは、本当か? 大丈夫か?」
マツノさんの必死な声が響き、横にいるおそ松さんとカラ松さんの目は細められ、忌々しい、というように二人同時に舌打ちをした。
やっぱ、似てるんだな。
「――そうか、気ぃつけな」
電話が終わると、おそ松さんは堰を切ったようにように喋り出す。
「なぁ、親父! 説明してくんない!?」
「待て、おそ松。その、一松と十四松とトド松と連絡が取れないらしくてな。チョロ松も、向かうそうだ」
不機嫌そうなおそ松さんは、頭をかきむしり、カラ松さんはポケットからタバコを出し火をつける。
「あ、お兄ちゃんにも頂戴?」
「ほらよ」
――あらあら? まぁまぁ?
この流れだと、タバコとタバコで直接火を分け合うシガーキス?
間近で見たことないや、と思って緊張しとけば、カラ松さんは普通にライターとタバコを手渡した。
流石に、漫画やドラマの見過ぎだね。
「ったく、日本からだと八時間もかかるんだぜー?」
「――はぁ、まいったな。弟達は無事だろうか……」
二人は、苦虫を潰したような顔をしてる。
私も、お兄ちゃんと連絡が取れないってわかったら、きっと落ち着いてなんか居られない。
でも、下手に声をかけるのも駄目。
だって、「大丈夫だよ」って言葉が一番欲しくないから。
もし駄目だったらどうするの、って私なら叫んじゃう。
こういう時は、できるだけ前に進む以外ほっといたほうがいいよ……。
「状況は、どうだったんです?」
「――それがなぁ、チョロ松が裏で指示していたんだが、だんだん手下達と連絡が取れなくなったらしい」
「下手すれば、ユダが複数居る可能性も……」
「そうだな。鈴ちゃんには悪いが、一緒に行動してもらうことになる」
大丈夫、抗争に出くわした事なんて何回もあるし。
銃の扱いには、慣れてるし、ナイフだってきちんと……、今日は持ってきてなかった!!
――あぁ、家に帰りたいけど駄目だぁ!