第8章 芽生えた感情【トド松、おそ松】
【絵菜side】
布団に寝転がりながら、私は今日一日の出来事を振り返っていた。
…まさか、あいつが私の前に再び現れるなんて。
二度と会うことはないと思っていた。自分なりに退路も断ったつもりだった。でも甘かったらしい。
…きっと、お父さんが仕向けたのかもしれない。昔から諦めだけは悪いもの。
もしそうだとしたら、私はどうすればいいんだろう。せっかく逃げてきたのに、これじゃ意味がないよ。
ため息をついて、寝返りを打つ。
…そして、トド松くんとおそ松くん。
さっきも二人で私を家まで送り届けてくれた。本当に今日はずっと彼らにお世話になりっぱなしだったな…。
こっちに来てから、初めてできた大切な友人。だから助けてくれたのも、純粋に嬉しかった。
でも…
トド松くんに抱き締められて。
おそ松くんにキスされそうになって。
私の中の、彼らに対する¨想い¨が、少し変わった気がする。
なんで二人が私にあんなことをしたのか、理由は分からないけれど。
…嫌じゃ、なかった。
あの男と別れてから、何度か男性に迫られたことはあった。でもその度にあの男のことが頭を過って、固く拒絶してきたのに。
どうしてだろう。
確かに6つ子のみんなには信頼を寄せていた。それは今でも変わらない。事実今日だって助けてくれた。こんな隠し事ばかりの私に、優しくしてくれた。
彼らを思い浮かべると、胸の奥が温かくなる…この気持ちは、何なんだろう。
「にゃー」
ルルが私の手に擦り寄ってくる。
「…ねぇ、ルル。私…どうすればいいんだろう」
「にゃー」
「…うん、そうだよね。自分のことだもん。自分で…考えなきゃ」
…でも、今日はもう疲れちゃった。
「おやすみ…ルル」
明日は、何事も起こりませんように…そう祈りながら、私は眠りについた。