第8章 芽生えた感情【トド松、おそ松】
【絵菜side】
「…な…んで…」
どうして声で気付かなかったのだろう。一年前まで聞いていたはずなのに。
…忘れたくても、記憶からなかなか消えてくれなかったのに。
ここにいるわけない、と思い込んでしまっていたせい?
「何固まってんの。一年ぶりの再会なんだから、喜んでくれたっていいんだよー?」
「……なんで、こっちに来てるの?東京に引っ越したって、なんで知ってるの…?」
相手のペースに飲まれないよう、精一杯の抵抗として彼を睨む。
けれどそんな反応も予測済みなのか、全く意に介す素振りを見せない。それどころか、心底愉快そうに私を見下ろす。
「まぁまぁ、積もる話もたくさんあるだろうけどさ。こんなとこで話すのもなんだし、場所変えようよ」
おもむろに右腕を掴まれる。乱暴ではないけれど、有無を言わさない力強さに、私はサッと血の気が引いた。
「…ッ離して!!」