第7章 動き出す、歯車
「……え」
画面に表示される、見覚えのある番号。…あの無言電話だ。
最後にかかってきたのは一週間くらい前だろうか。逆を言えば、それ以来かかってきていない。だから私もすっかり忘れていた。今、この番号を三度目にするまでは。
…ただの間違い電話だと思っていた。でもさすがに3回目。そろそろ気味悪がってもいいよね?
バイブは鳴り止む気配がない…いっそ無視してしまおうか。
ううん、この際はっきり言おう。無言だろうがなんだろうが、切られる前に勝負に出てやる!
ピッ
「もしもし?以前から気になっていたのですが、無言はやめていただけますでしょうか。3秒以内に名乗っていただけない場合は、警察に相談しますよ?」
…うん、完璧。こういうのは大げさに言っておけば向こうもビビるって、前友達に教わったし!
『………』
……しかし、相変わらず無言。どうしよう、また切られちゃう!ここはだめ押しでもう一度…!
「さ、再度申し上げますが、あまりにもしつこいようだと警察に…
『…ククッ』
……え?今何か…
『アハハハハッ!もう無理、限界…っ』
しゃ、シャベッタァァァァ!!
『いや〜、相変わらず面白いねお前』
「は、はぁ?!」
なんですか急に!すっごく馴れ馴れしいんですけど!?
「だ、誰ですか?名乗ってくださいって、私言いましたよね?」
『え〜?別に名乗らなくても分かるでしょ』
「分からないから聞いて…」
ザッ
右側に人の気配がして、顔を向ける。そこには一人の男性がいた。
「久しぶり、絵菜。何も変わんなそうで何より」
にこやかな笑みを浮かべるその顔を見て、私は絶句する。