第22章 恋い焦がれたその先に【チョロ松END】
お盆を受け取って、土鍋の蓋を開ける。できたてらしく、ふわっといい匂いとともに辺りに湯気が立ち込めた。
中身は、シンプルな卵粥。お米がテカテカしていて、卵もとろっとしていて十分おいしそうだ。
「わぁ…すごいよチョロ松くん。初めてでこんな風に作れるなんて、料理の才能あるよ」
「え!?そ、そそ、そうかな…?で、でも、まだ食べてみないと分からないよ…?味見はしたけど、君の口に合うか分からないし…」
「大丈夫、絶対おいしいよ。…じゃあ、いただきます」
手を合わせてから、れんげでお粥を掬い、口に運ぶ。
味はだいぶ薄め。多分余計な調味料は一切入ってないんだと思う。うちのお母さんが作るお粥はいつも濃い味で病人には酷だったけど、このお粥は本当に食べやすくておいしい。
「ど、どう?はっきり言ってくれていいよ!遠慮とかいらないからね」
…チョロ松くんは、もっと自分に自信を持てばいいのにな、とつくづく思う。
彼はこんなにも、人を幸せな気持ちにしてくれる力を持っているんだし、一生懸命誰かを守ることだってできるのに。
…私は、そんなあなたが大好きなのに。
「ふふ、おいしいよチョロ松くん。なんだか優しい味がするの」
「優しい味…って、やっぱり味薄すぎた?!ごめん、なんなら醤油でもかける?!」
だから、なんでそうなるのだろう…でも、そんなところもチョロ松くんらしい。
本当に醤油を持ってこようとするチョロ松くんをなんとか落ち着かせて、私は幸せな気持ちでお粥を噛み締めた。