第22章 恋い焦がれたその先に【チョロ松END】
……いい匂いがする…。
熟睡していた私は、隣から漂ってくるおいしそうな香りで目が覚めた。我ながら食欲はあるみたい…
首を動かすと、布団の側に座っていたチョロ松くんと目が合った。
「…あ、起きた?絵菜ちゃん」
ふわりと柔和な笑みを浮かべる彼は、なぜかスーツ姿ではなくいつものパーカー姿だった。
「ああ、これ?買い物に行く前に走って家に戻ったんだ。その時に着替えたんだよ」
なんとなく察したのか、チョロ松くんが説明してくれる。
「ところで、勝手に台所借りちゃったけどよかった?そんなにあちこち開けてないし、なんでもかんでも使ったわけじゃないけど、元気になったら一応確認してくれる?」
「え…台所って…」
そこでようやく、彼の横にお盆に載せられた土鍋があるのに気付く。
「!それ…」
「ごめんね。僕料理なんてしたことないから、おいしいかは分からないけど…一応母さんにレシピをもらって、見よう見まねで作ってみたんだ。一旦家に戻ったのも、レシピのためだよ」
おいしそうな香りは、土鍋から漂ってくる。これを、チョロ松くんが…
「私のために…ありがとう、チョロ松くん」
「どういたしまして。お腹空いたでしょ?食べられそうかな」
「うん…っ」
体を起こす。さっきまであんなに全身がだるくて意識が朦朧としていたのに、だいぶ楽になっていた。眠っていたからなのか、チョロ松くんの優しさが嬉しいからなのか…きっと両方だろう。