第16章 踏み出す勇気【チョロ松】
「隠さなくてもいいよ。誰だって好きなアイドルや芸能人の一人二人はいるものだし」
「で、でも、アイドルはアイドルでも地下アイドルだしさ…」
「んー、あまり詳しくないけど、芸能人だろうが地下アイドルだろうが、努力してその仕事をしてることには変わりないだろうし、誇りだってあるんじゃないかな?チョロ松くんだって、彼女のこと、¨地下アイドルだから〜…¨って他人に差別されたくないでしょ?」
「!!……そうだね。君の言う通りだ」
「誰かのファンで居続けるって、けっこう難しいことだと思うよ。自信持っていいんじゃないかな」
私には特別好きな芸能人とかはいないけれど、こうして好きなことに注力できるチョロ松くんは、羨ましいとすら思う。
「ライブ見に行く?私は構わないよ」
「いや、いいんだ。確かに今日いきなりライブがあったのには驚いたけど、今は君とデート中だし、それに…」
チョロ松くんが私を見る。
「いくらファンとはいえ、こんな時にまで自分の趣味を優先させるほど、ダメ人間なつもりはないからね。特に今日はいいとこなしだし、頑張って挽回しないと」
ふわり、と笑う彼に、不覚にもときめいてしまう。
挽回なんて…する必要ないのに。
私があなたを悪く思ったことなんて、只の一度もないんだから―。