第3章 世にも稀な6つ子たち
【絵菜side】
あの後、屋台の店主…チビ太さんに場を宥められて、私は6人のお客さんと一緒にお酒を飲んでいた。無理やり座った席はなぜか右に3人、左に3人の真ん中。端でよかったんだけどなぁ…。
「それにしても驚いたよ。6つ子なんて本当にいるんだねー」
なぜか興奮状態だった彼らが落ち着きを取り戻した頃、彼らは私にいろいろ説明してくれた。
彼らが6つ子であること、近所に住んでいてこの屋台にはよく足を運んでいること、チビ太さんとは昔なじみなこと、などなど。
時々、初対面の相手にそこまで?となるくらいプライベートな話もされたけれど、まぁ、みんなお酒飲んでるからね。
「君って、こういう店よく来るの?」
そう聞いてきたのは、長男のおそ松くん。
「ううん、実は初めてなんだ。コンビニでも寄ろうかなって思ってたら、この屋台を見つけて。あまりにもお腹が空いてたから、興味本位で立ち寄ってみたの」
「へぇー。じゃあすっげー偶然だったんだな」
「そういえばスーツ着てるけど、仕事帰りだったの?」
三男のチョロ松くんが尋ねてくる。
私は首を横に振った。
「あ、仕事はしてないの。その…就活中の身で」
これこそ初対面の相手に言うようなことじゃないかも…と思いつつ、にへらと笑うと、
「……え、仕事してないの?」
左端からボソッと呟きが聞こえた。確か、四男の一松くん。
「う、うん。いや、したいとは思ってるんだよ!ただその…どうにもうまくいかないというか。あはは…」
うぅ、さらに詳しく言ってどうするのよ私!事実だけども!