第9章 僕らの知らない君【十四松、一松】
「十四松くーんっ」
あ!絵菜と一松兄さん戻ってきた!
「おかえりーっ!絵菜!一松兄さん!」
僕は立ち上がって二人を出迎えると、一松兄さんが無表情のまま僕に何かを差し出してきた。
「わ!クレープ?クレープだ!」
「……やる」
「一松兄さんが買ってきてくれたのー?」
「ん」
クレープを受け取って、眺めてみる。すごい、いろんな種類のフルーツが入ってる!クリームもたくさん!あとなんかよく分からないものも見え隠れしてるけどとにかくおいしそーっ!
「わーいっ!あんがと一松兄さーんっ!それから寂しがらせてごめんなさーい!」
「ぐふっ!?」
僕は嬉しさのあまり思いっきり兄さんにタックル…じゃなくて抱きつくと、兄さんは呻き声を上げてよろめきながらも、空いている手で僕の頭を撫でてくれた。
「…お前が謝ることじゃないだろ。俺こそ勝手に拗ねたりして悪かったよ」
「あははーっ!喧嘩両成ばーいっ!」
「それはちょっと意味が違うだろ十四松…って、何泣いてんのあんた」
一松兄さんがぎょっとして絵菜を見る。えぇ!彼女泣いてるよー!?
「わわわ、どうしたの絵菜!僕たち君を悲しませるようなことしちゃった?お願い、謝るから泣かないでーっ!」
「あ!ち、違うの、仲直りできてよかったなって…感動してたら、つい」
「いやどんだけ涙脆いの…そもそも喧嘩してたわけじゃないし」
「こんな時こそ甘いものだっぺよー!ほらほら、クレープ3人で食べよう!ね!」
「…うん!」