第3章 女神様、見えるようになる
ここは松野家。
6人のニートが巣食う、ごくごく普通の家庭である。
――いや、十分普通じゃないってツッコミは置いといて。
おそ松「あー、暇だねー、諸君……」
平日の昼間なのに、六つ子は漫画を読んだり、アイドルのCDを聞いたり、野球盤で遊んだり、猫と遊んだり、鏡を見ていた。
その時だった。
ぽんっと音を立て、一人の男が出てくる。
仔リスのようにくりくりした瞳に、小さい顔、そしてぷっくりとして艶やかな唇の可愛らしい金髪のショートヘアの高身長男子。
しかし、彼は宙に浮いていた。
シャンス「よっ、カラ松!!」
元気よくシャンスが片手を上げて挨拶すれば、カラ松は彼をちらりと見て微笑む。
が、実のところシャンスは、カラ松以外見えてない。
なので、目線の先に居る一松が、目を細めた。
一松「何、クソ松」
カラ松「あぁ、いや。気にするな」
シャンス「カラ松カラ松ー。屋根の上出てこいよ。マスターが飯用意してくれたんだ」
そう言うと、シャンスは手を振って屋根の方へと飛んで行く。
それを見て、カラ松は「弾き語りしてくる」とだけ言って、ギター片手に屋根の上へと登っていった。
そして、屋根の上ではカラ松の守護神、ヴィクトワールが料理を広げて待っていた。
チーズフォンデュをメインに、A5ランクの松阪牛、パン、ハム、ウィンナー、旬の野菜等。
カラ松は、パァッと嬉しそうに笑うと、勢い良くその場に駆け寄る。
しかし、その様子を一松が見ていた。
カラ松に続き、一松も屋根の上へとやってくれば、目の前に広がるのは、松野家ではありつけないご馳走ばかり。
一松の腕の中に居る猫も、松阪牛を見て目を輝かせる。
一松「いつの間に……」
双子神は「あっ」と言いながら、固まってしまった。
量は多いものの、受け取り皿やフォークは一人分のみ。
その豪華な料理を見て、一松が生唾を飲み込む。
そして……。
一松「トド松ー、全員分の茶碗と箸持ってきて!! できるだけ早く!!」
トド松「え、何々? って、うわぁ、何そのご馳走!!」
屋根の上に突如出現したご馳走に、トド松も目を丸くさせる。
一松「クソ松、なんで俺らに内緒で食べようとしたんだ!!」
トド松「カラ松兄さん……!?」