第5章 歪んだ君は
夢主視点
夕方、一松くんは帰ってきた。
テーブルにあったおにぎりがなくなっていることに気づくと、嬉しそうに一松くんは笑う。
ソファに座っている私の隣に一松くんも座った。
「大人しくしてた?」
「こんなのつけられてたら何もできないよ」
一松くんは、私の頭を優しく撫でた。
その瞬間、私の胸はドキッと高鳴る。
その手は大きくて、男の人だって意識してしまう。
こんなことされたら、まだ一松くんは歪んでないって、元にもどれるって思ってしまう。
そう考えてしまうのは、今の私にとっては苦しく感じられた。
「お風呂はいってきたら?」
お風呂か。
そういえば昨日入っていなかった。
でも、着替えとかはどうすればいいんだ。
ここには私の服なんてないし…。
「服とかはおばさんに渡されたから」
一松くんは、私の心が読めるのだろうか。
というか、お母さん仕事早すぎ。
「ありがとう。じゃ、行ってくる」
昼間どこに何があるかは見て回ったからどこにお風呂場があるとかは把握した。
一松くんは私に服など生活用品が入った鞄を渡すと、
ソファに座り、テレビを見始めた。
足のは外してくれないのか。
私はお風呂場に行き、来ていた服を洗濯機の中に入れ、シャワーを浴びる。
ほんとにこの部屋はなんでもある。
テレビや冷蔵庫が買えるくらいだから、数年前から働いていたんだろうな。
それにしてもなんの仕事をしてるんだ。
働いてるのは嬉しい事だけど、職業を教えてくれなのは怪しい。
それに、私の写真を隠すために部屋を借りるのも変だ。
隠そうと思えばどこにでも隠せるだろうし、ここまで生活できるように整えられてるのもおかしい。
もしかしたら、私と付き合って一緒に暮らそうと思ったのかな……。
それなら嬉しいけど。
私はシャワーを止め、髪を洗う。
一松くんが使ってるジャンプーか……。
あっ、何考えるんだ私。
ただの変態じゃないか。
髪を洗い流し、シャワーを止めお風呂場から出る。
髪と体を拭き、服に着替える。
すると扉からノックが聞こえ、「鎖さびたらいけないから、拭いといて」と一松くんは言った。
人使いが荒い。
鎖を拭き、リビングに戻り、一松くんの隣に座った。