第2章 帰り道
と、ほっとした次の瞬間、
「キャーーーーーー!!!」
と、遠くで女の人の叫び声が聞こえた。
(うそ、まさか...)
「いや、いやぁぁぁあ!!」
「や、やめろ!うわぁぁぁあ!」
「みんなここから逃げろ!早く!」
「ママぁぁぁあ!」
朝、夢で見た、あの“黒い何か”が現れたのだ。この距離ならはっきり見えるまずなのに、それの周りはぼやけている。人の形に似てはいるが、顔などはない。2mはあるのだろうか、大きいので人混みの中でも見える。
街は混乱に包まれていた。慌てて人々は必死にある一点から逃げていく。私は何度も人にぶつかってしまった。当たり前だ。こんな状況で立ち止まっていたら、ぶつかるに決まっている。
もちろん、逃げるべきなのはわかっている。あれに食べられてしまうかもしれないのだから。でも、私は何かしなければいけないような気がした。