第20章 9615km 日本
ここ、日本からあそこまで9,615km。飛行機で12時間半の所に私の想い人が居る。
そう頻繁には会えず、寂しい思いをしていた時に、彼女の上司であるアーサー・カークランドは私に言った。
「珍しく仕事で疲れてるらしいから、菊んとこで休養をとらせてやってくれ。
べ、別にこれはあいつの為なんかじゃないからな!!あいつがいるとどうも騒がしくてうるせえし…そう、俺のためだ!俺のためだからn」
あの時よりもだいぶ性格も丸くなったアーサー・カークランドは、顔を赤くしてそんな事を言いながら私に頼み事をしに来た。
部下の事を思っての行動を言葉で台無しにする彼に複雑な気持ちを覚えつつ、出迎える準備を進める。
彼女と顔を合わせるのは数ヶ月ぶりだ。
世界会議にも参加しない彼女とは会う機会は滅多にない。
普段は私が忙しい事もあり、文やメールといったやり取りしか無かった為、改めて会うとなると少し緊張して来る。
「わんっ」
「…おや」
そんな私を心配そうに見上げるぽちくんに癒され、頭を撫でると大きく尻尾を振った。
「この歳になって恋沙汰で緊張しているなんて…もしかして私もまだまだ若いのでしょうか、なんて…」
「わんっ!わんわんっ」
私に向かって鳴いた後、玄関の方へ走っていった。
その直後、最近付けたインターホンの音が家中に鳴り響く。
予想以上の耳障りな音に耳を塞ぎつつ自分も玄関の方へ足を運んだ。
戸のガラス越しに向こう側にいる彼女の明るい金髪が目に入った。
下駄を履き、ようやく戸をガラガラを音を立てて開ける。