第18章 献身的な愛 南伊
ここで切り上げて、話した本人はため息をついた。
声も出なかった。今まで一緒にいたのに、こんな話一言も聞いてない。
どうして
どうして俺は聞かなかったんだろう。
勿体ぶらずに相談に乗ってやればよかったのに。
そのことを知ってればわざわざ電車使ってロヴィーノの家まで行って登校すれば、こんなことには…。
自分を傷つけるのを見たのだってあの一回じゃなかったのに。
「…何でお前が泣いてんだよ」
「しらねぇよ……」
「は、意味わかんね」
最悪だ。
俺の不注意で、友達の傷を余計に増やしてしまった。
楽にしてやるどころか、真逆のことを俺は…。
自己嫌悪に浸ってる中、ロヴィーノが大きなあくびと共に身体の筋肉を解す為に伸びをした。
「あー…話せてだいぶ楽になったぞコノヤロー…これで…もう、思い残すことはねぇな」
「は…?」
「お前との時間、嘘なしですっげえ楽しかった。ローナのこと……大好きだった」
「愛してる」
振り返って、涙を流しながら笑う。
その瞬間、重力に身を任せてロヴィーノは、
そのまま落ちてった。
「ロ、ロヴィーノ…」
俺の下で人の劈く悲鳴や騒ぎが聞こえてくる。
それよりも五月蝿い自分のヒューヒューという呼吸音と心臓。
「ロヴィーノッ!!!
…やだ…置いてくなよ…、俺まだお前と行きたいとこあんだよ…。あとさ、お前と話してると…すっげえ楽しくてさ、まだ話したいなって…だからさ……」
どこを刺せばすぐに逝けるだろうか。
胸より首の方がいいってどっかで聞いたことある。
じゃあ首にするか。別にどっちでもいいや。
随分前にあいつから取り上げていたカッターを胸ポケットから取り出して、最大まで伸ばして、脈目掛けて
「あっちでも…いつもみたいに話そうぜ…な?」
迷いなく刺した。
真っ暗に眩む視界と同時に自分の呼吸音も遠くなっていく。
俺も愛してるから、一緒に死のうぜ。
あいつが死ぬ前に言いたかった。
「ッロヴィー……」
愛する人の名前を最後まで言えたか、俺には分からない。
誰か、愛してた男を自分の手で殺したも同然の事をした俺をどうか、許してください。
罰を、ください。
end
ロヴィーノの誕生花
3月17日…アンスリウム
花言葉…献身的な愛