第14章 Ho bisogno di te. 南伊
皮膚が溶ける感覚、ジリジリと焼ける音、確かに痛いけど別に泣くほどではなかった。
それよりも、それでロヴィーノの鬱憤が晴れるならって思ったら、痛みなんて辛くない。
「ローナ、痛いか?」
押し付けるのをやめずに、俺に問いかける。
その目は、俺の手首も瞳も見ずに、何処を見ているのか。
「ッはは…痛くねぇ」
「嘘つけ、涙出てんぞ」
「お前だって泣いてんじゃねぇか」
「…だって…お前が、俺見て、優しそーに笑うから…ッ…」
ポタリと、火傷の丁度真ん中にロヴィーノの瞳から溢れた涙が落ちて、滲みた。
「ちくしょー…お前のせいだ…ぅっ…うう…ちくしょー……」
「ロヴィーノ、」
俺の手首を握っていた少し日焼けしている手、その先に目をやると無数の縦横斜めの赤黒い線。それから爪の跡。
きっと、悩んできた数の分だけあるのだろう。
なんでコイツは、人の事情には首突っ込むのに自分のことになるとこうも…。
「う…わあぁあ…!!ローナ……ローナ…あああ…」
「わかった、わかったから。」
とうとう泣き出したロヴィーノの腕を引っ張り、潰してやろうかってくらいに抱きしめる。
細い肩が呼吸のタイミングを逃す度に上下して、跳ねた。
あの日から何度抱きしめて、宥めてやったことか。
そりゃ馬鹿みたいに焦ることもなくなったし、落ち着かせる方法も少しずつわかってくるわな。
「ロヴィ、大丈夫、大丈夫だから…な?」
「ひっ…う、ああ……っ…ううううっ…」
「気づいてやれなくてごめんな、相談出来ねーのに。俺が気づいとけば…こんなことしなくても良かったのにな」
「ちがっ…ちが…う…」
「そんな奴だって、分かってたのにな」
その左手首に軽くキスして、赤味がかかった茶髪を撫でて、もっかい抱きしめる。
乱れが増していく呼吸にロヴィーノがパニックを起こさないように、宥めて、宥めて。
けど、そんな行動は無意味に等しいとでも言うように、ロヴィーノの手は震え始めた。