第14章 Ho bisogno di te. 南伊
幼馴染にロヴィーノ・ヴァルガスという南イタリア人がいる。
弟とはどうも似てなくて、不器用で自分から喧嘩売る馬鹿。
周りからは弟と比較され続けて、報われないやつ。
その分、他の奴が落ち込んでると真っ先に気付く野郎。
そのくせなんでも1人で抱え込むんだ。馬鹿だよな。
そんな馬鹿を、ちっせぇ頃からずっと見てきたから分かった。
少しの異変もね。
めっきり寒くなってラテン組がナンパをしなくなった12月の半ば。
凍えそうな昼の中、屋上にロヴィーノの姿があった。
手すりに持たれながら黙ってイヤホンを耳につけ、煙草を吸っている。
足元には既に踏んづけた跡がある煙草の残骸が3個程。最近、煙草の数が増えているのも既に知っている。
こんな所見つかったら、退学の危機なのによくもまあ堂々と吸えるよなあ。
しゃがんで煙草の残骸を拾い、ロヴィーノの隣に移動しleftの方のイヤホンを奪うと最近流行りのJ-popが、鼓膜がはちきれんばかりの爆音で脳に響く。
「っせぇ……」
これ以上耳が痛くなるのは御免だとイヤホンを取り、ロヴィーノがつけている方も没収すると、もちろん睨まれた。
反抗期真っ盛りなのか、数年間ずっと冷たくされっぱなし。それでも広い心で暴言も暴力も受け止める俺って、素晴らしいよね。
「…何してんだよコノヤロー」
「こんな爆音で聞いてたら難聴になるぜ」
「あぁ?うざってぇお前の声が聞こえなくなるなら寧ろ大歓迎だな」
「あーはいはいそうね」
別に暴言や暴力に傷つくことは無い。俺はそれよりも
その苦しそうな顔で罵ったり、殴られる方が何倍も辛い。
「なぁに?またベッラに振られたの?」
「ちげーよ」
「それともヘタレだって笑われた?」
「それもねーな」
「じゃあまたフェリと比較された?」
わざと図星を付いてやると、先程よりも殺気がこもった目で睨まれた。
そして右手に持っていた吸いかけの煙草を、俺の左手首に持っていき、
「っづあ…ッ!!」
そのままグリグリ押し付けた。