第3章 Jealousy Bomb 英
「おいローナ、ローナ」
俺は帝国様が苦手だ。
別に嫌いとは言ってない、ただ苦手。
彼とはかれこれ数百年兄弟兼上司と部下の仲だけど、これだけ一緒にいてもやはり苦手なもんは苦手なのだ。
多分歳も変わんないのに俺より成果を出して、出しまくったから。
そう、ただの、劣等感。嫉妬。
でも何処か、絶対嫌いになりきれない。
だから、こうやって彼に名前を呼ばれるのもあまり自分的に気持ちよくない。
「…なんすか」
「あらかさまに嫌そうな顔すんなよ…」
「疲れてんすよ、それか帝国様の目が節穴なだけ」
「んだとっ…そうやって馬鹿にしてっとフランスに流すぞ」
「貴方と貴方の彼氏がラブラブしながら作った英仏海峡トンネルで帰ってきますよ」
「なっ…!?」
こいつはドーヴァー海峡を挟んだアイツの話題に弱い。惚れているから。
最悪な事に腐っても兄弟の俺には帝国様の情報が耳から漏れるほど入ってくる。
だから夜な夜な部屋でイチャラブしてたり、最近朝にならないと帰ってこない理由も分かってる。
多分あっちもわざとだと思う。そういうやつだから。
だからラテンは嫌いなんだ。
「…ローナ?」
「っな、なんだよ…」
俯きがちになっていた俺に、帝国様が顔を覗き込んできた。
特徴的な翡翠の大きな瞳とバッチリ目が合う。
「どうしたんだ?熱でもあるのか…?」
ほら、そうやって無意識で自分の額で俺の体温を確認するんだ。
どうせ所構わず誰にでもやってるんだろ。それで何人もの男女がときめいてんの知らねえんだろ。
あんたのそういう所、大嫌い。
「熱なんかねえよ…近ぇ」
「はぁ?…なんなんだよ、どうしたんだお前」
「何が」
「だってお前、辛そうな顔してる」
そんな顔してない。自分で言うのもなんだけど、ポーカーフェイスには自信がある。
てゆーか、今のあんたより辛そうな顔してるとか何処のドイツだよ。
「そんな顔してない」
「…目逸らした、」
「……」
「昔からそうだよな、嘘ついてる時は必ず右に逸らす。」
んなの知らない。
もし辛そうな顔してるとしても大半はお前が元凶。
「まあなんつーか…あまり溜め込むんじゃねぇぞ。その…俺に言いにくい事なら菊とかエリザも話聞いてくれると思う…から」
「だからそんなんじゃ…」