第6章 君に微笑みと花束を 日
「えぇ。ですからこのようにローナさんから直接プレゼントを貰えることが、私にとっての最高のプレゼントです。たとえ貴女から貰ったものがセミの抜け殻でも大切にしますよ?」
「cicada…」
「冗談ですよ、そんな顔しないでください。…そういえば、来月はアーサーさんと貴方の誕生日でしたね…なにか欲しいものはありますか?」
そう私が聞くと、ローナさんはフッと小さく笑って来た道を戻ってしまう。片手で私に手を振りながら、一言。
「その気持ちだけで俺は腹いっぱいだよ」
強い北風が吹いて、黄色と白の花弁がひとひら舞った。
「それですよ、私が伝えたかった気持ちは…」
なんだ、最初から知ってたんじゃないですか。
「なんか言ったかよ」
「いえ、では取っておきの贈り物を用意しておきますので」
「まあ楽しみにしておいてやる」
まだほんのり顔を赤くしているローナさんの隣で、私は来月に迎えた彼女たちの誕生日を少しだけ待ち遠しく感じた。
end