第29章 貴方のやり方が好き。仏
うるせぇわ、と耳元で騒ぐそいつの口を手で塞ぎ、再び電話の相手をする。
「なんだ、急だな」
『うん…あいつが昨日突然言い出したのよ』
あいつとは、言うまでもなくギルベルトである。
小学校1年からの仲だとは聞いていたけど、まさかここまでになるとは思わなかったと照れながら語るエリザは、いつも以上に女の子らしくて、羨ましい。
「なぁ、」
『…ん?』
「お前、今世界一女の子らしいよ」
『…私ローナちゃんと結婚しようかしら』
それは認めねえからな!!
マイクが声をキャッチしきれずに騒音に生まれ変わった。
とっさに耳を抑えて呻いていると怒声と罵倒の嵐が途切れ途切れに聞こえた。
婿さんになる筈の不憫は、スマホのあちら側で鬼嫁になるであろう彼女に躾されているのが伺える。
…きっといい旦那になるよ、色々な面で。
「…お幸せに」
多分、いいコンビだよあいつらは。
さっきまで他人の幸せを見て荒れていたのに今は和んでいる。
相変わらず自分性格が理解できない。
電話を切り緩む口元を一生懸命押さえながら料理にひと手間加えているあいつの横顔を何気なく見る。
ムカつく横顔に認めたくはないけど見蕩れていたらしく、ベルフラワー色をした目とバッチリ合ってしまった
「…なに?」
優しく微笑まれて思わずそっぽ向いた。
いくら何でもズルい、あの笑い方。
忘れた頃に思い出すコイツの魅力に何故かムカムカし始める。
とりあえず頭を引っ張たいとく。
「いったい!!なに!!DV!?」
「うっさい、飯だ飯」
「んもー…って、こら!!足ちゃんと下げなさいって!!」
付き合ったって、結婚したって俺らの関係って実際変わらないと思う。
こんなふうに悪口を言い合って、罵りあいの繰り返し
はたから見たらおかしいんだろうけど。
ぶっちゃけ言えば
「大嫌いが大好き」なんだよな。
End