第29章 貴方のやり方が好き。仏
最近、異様に結婚とかウェディングドレスに関係のある広告が多すぎる気がする。
そりゃ結婚はいいことさ、ああ素晴らしい事だぞ。
そうだけど、なんで今更?ジューンブライドなんてものもあるんだ、6月が普通じゃないのか?
だが、ただ単に俺が意識して無いだけで今までもこんな風に頻繁に広告が出ていたのかもしれない。
まぁどっちにせよ、こんなに意識し始めたのはこの髭と付き合い始めてなんだかんだ3年程経って、余裕ができてきたからか。
確かに俺もとっくに20歳越えだし、あいつもいい職について忙しい毎日を過ごしている。
チンピラの端切れだった俺らも親から独立して、マシな生活ができて、金もまぁそれなりにあるし、何よりも幸せなんだ。
それにプラスして永遠の愛を誓うーなんて、俺にとっては少なくとも非現実的で、まだ考えられない。
結婚なんて堅苦しいものよりかは、こうやって半分居候で半分恋人みたいなゆるーい感じがちょうど良かった。
人の幸せを見て泣いて喜ぶ程優しくない俺は適当に鼻で笑って、ロマンス系ドキュメント番組からバラエティ番組にチャンネルを変えた。
夕ご飯のおかずを並べながら笑いかけるそいつのふざけた言葉に適当に返事をして、携帯を操作する。
すると、知り合いであるエリザベータから着信。
スライドしてマイク越しに挨拶をする。
「俺だけど」
『あ、ローナちゃん?私だけどさ』
「あぁ、どうした?」
『あのね、急な話で悪いんだけど…ローナちゃんには早く報告したくて…私、結婚するのよ』
えぇえぇええ!?…と大声をあげたのは俺ではなく何故か盗み聞きした髭であった。
うるせぇわ、と耳元で騒ぐそいつの口を手で塞ぎ、再び電話の相手をする。