第27章 うそつき 仏 ※必ず終わらせます!!
『うちの陸上部雑魚いじゃん?お願い!!ローナくん脚速いし運動できるから助っ人頼まれて!!』
ちょっと可愛い部員に頭まで下げられたら断る事ができなくて、渋々了承してしまったあの時の俺を殴りたい。
しばらく運動して無かったせいで身体中筋肉痛である。
これは今すぐ風呂に入りたい…、なんで今日に限って原付で来なかったんだろ…。
考えてる間に俺が住んでいる寮の玄関が見えてきた。
寮、といっても見た目は一般的な一軒家なのだが。
未成年で一軒家を持てるってフリーダムすぎる学園長のおかげでもある…しかし、同じような建物がそこら辺にあるから時々見分けがつかなくなる。
そのため「ヴェー?あっ間違えちゃったー」とフェリシアーノがうちの寮に間違えて上がり込んでくるのはもうお約束と化していたりする。
「ただいまー」
汗で濡れたジャージを適当に洗濯機に投げ入れ、リビングのソファに倒れ込む。
テレビの前にギルがいないってことはおおよそ生徒指導か。トーニョはバイトだしロヴィーノはナンパか?兄貴は生徒会長だし…
ここで本来いるはずのあいつを思い出す。
フランシスは何処だ?
「おい髭ー、喉乾いたー」
響くのは自分の声のみ。
やはりこの家に居るのは俺だけみたいだ。
チッと大胆に舌打ちをして起き上がろうとしたがどうにも冷蔵庫まで行くのが億劫で渋々諦め、少しの間寝ようと目を閉じた。
その時。
「…?」
自分の優れた聴覚が何かを感じ取る。
父親の厳しい特訓により他の人間よりも敏感になった五感は仕事以外の他の場面でも結構役に立つことがある。
その何かが聞こえた方向に重い足を運び、窓を開ける。
初春の夜風が俺の髪を揺らす。
心地よさに目を瞑り涼んでいたのもつかの間、風に乗って届いてきたのはなんとも愛らしい声だった。