第24章 可愛くない 伊
「ヴェー。ローナ、ローナ」
夕飯を食い終わった後の洗い物をしている俺の背中に、頭をぐりぐりと押し付けてくるフェリシアーノ。
いつも聞いている猫なで声で俺を誘惑しようとしている。つかしてくる。
「うー…ローナ…」
「はいはい、皿洗ったらな」
兄とはまるで正反対。
甘え上手で、今までずっと可愛がられてきたこいつに我慢しろだなんて言っても無意味なのはわかってる。
ハナからわかってるけどさ…。
「ローナ〜…」
「んんん゛…我慢して…」
一言で言えば、可愛い。
しかもあざといからさらに可愛い。
彼氏バカだなんて自分でわかってますよ。わかってるけど、
「俺我慢出来ない…」
あざといなさすがフェリシアーノあざとい。
俺の方が背が高いからフェリシアーノが俺を見上げる形になるんだが、こういう時だけ5cm差で良かったって思う。
ありがとう、俺の身長…ありがとう。
何故か涙目で抱きしめてくるフェリシアーノに我慢がきかなくなって、しぶしぶ振り向いてこちらも抱きしめてやる。
そうすれば「ヴェー♪」といつもの音を出してくるんをハートの形にした。
「えへへ、好きー」
「うん…っん゛、俺も好き…んん゛」
この野郎、お前最近周りにどっちが彼女かわからないって言われたの知らないだろ。
「フェリシアーノが料理すんの?ローナちゃんが稼いでるの?
…え?お前彼氏だっけ?あれ?あ、そっか…ブフォッスwwwww」ってフランシスに言われたの知らないだろ。
大丈夫、セーヌ川に流しといた。
「フェリちゃんがお嫁さんに行くなんて親分泣きそうやわ。ローナちゃん、泣かしたら殴ったるからな」なんてアントンに言われたのもしらないだろ。
大丈夫、闘牛に轢かれてた。
「けっせせせ!幸せになれよ!!」
ってギルベルトに言われたのも知らないだろ。いい奴だよ。
あいつ知らんがエリザにボコられてた。あれは大丈夫じゃない。
あまりの可愛さに俺が悶え苦しんでいることをしらない彼は更にとんでもない事をし始める。
「キスしてあげるー」
「!?」